南洲翁遺訓 - 04

万民の上に位する者、己を慎み、品行を正しくし驕奢きようしやを戒め、節倹を勉め、職事に勤労して人民の標準となり、下民其の勤労を気の毒に思ふ様ならでは、政令は行はれ難し。然るに草創そうそうの始はじめに立ちながら、家屋を飾り、衣服を文かざり、美妾びしようを抱へ、蓄財を謀りなば、維新の功業は遂げられ間敷まじき也。今となりては、戊辰の義戦も偏ひとへに私を営みたる姿に成り行き、天下に対し戦死者に対して面目無きぞとて、頻しきりに涙を催もよおされける。