南洲翁遺訓 - 18

談国事に及びし時、慨然がいぜんとして申されけるは、国の陵辱りようじよくせらるるに当りては縦令たとい国を以て斃たおるるとも、正道を践ふみ、義を尽すは政府の本務也。然るに平日金穀きんこく理財の事を議するを聞けば、如何なる英雄豪傑かと見ゆれども、血の出る事に臨めば、頭を一処に集め、唯目前の苟安こうあんを謀はかるのみ、戦の一字を恐れ、政府の本務を墜おとしなば、商法支配所と申すものにて更に政府には非ざる也。