南洲翁遺訓 - 13

租税を薄くして民をゆたかにするは、即ち国力を養成する也。故に国家多端にして財用の足らざるを苦むとも、租税の定制を確守し、上を損じて下をしいたげぬもの也。能く古今の事跡を見よ。道の明かならざる世にして、財用の不足を苦む時は、必ず曲知小慧きよくちしようけいの俗吏を用ゐ巧みに聚斂しゆうれんして一時の欠乏に給するを、理材に長ぜる良臣となし、手段を以て苛酷に民を虐たげるゆゑ、人民は苦悩に堪へ兼ね、聚斂を逃んと、自然譎詐狡猾きつさこうかつに趣き、上下互に欺き、官民敵讐てきしゆうと成り、終に分崩離拆ぶんぽうりせきに至るにあらずや。